鈴木もぐらと鶏むね肉フライ「いとをかし」【お笑いコラム】

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空気階段というコンビの鈴木もぐらという芸人がいる。

正直、最初は彼のことがどうにも苦手だった。

何百万の借金を抱えて、お酒にタバコに風俗にギャンブルまみれ。人力舎の岡野陽一さんと双璧をなす「クズ芸人」の筆頭。

そんな紹介とともに目の前に現れた彼。ここまでの紹介だけでもう無理。そりゃそうでしょ、女性を引かせる要素がてんこ盛りだよ。

さらに、私が引いたのは、某番組で彼が歯から血を出していたのを見たから。

ねずみしかかからないはずの病気にかかったこともあるという話もあって、大丈夫かこの人?と、痛々しさを覚えて、ただただ、拒否反応を覚えるしかなかった。

そう、最初は申し訳ないけど苦手だった。それが、2020年の初めのころ。

しかし、年の瀬の今、あの頃と心境が変わった。

今、私は鈴木もぐらという芸人が心から大好きです。

鈴木もぐらを見直したきっかけは、2020年8月にYouTubeで立ち上がった、「高円寺チャンネル」。


高円寺在住の4人の芸人が高円寺のおすすめスポットかわるがわる紹介しているこちらのチャンネル。もぐら氏もここのメンバーの一人だった。

そして、このチャンネルのもぐらさんが出演している動画のおかげで、彼を見る目が本当に大きく変わった。

見たのは、高円寺のディープな定食屋さん「タブチ」を紹介するもぐらさん。

これを見てまず驚いたのが、きちんとトークできること。思えば、テレビで見たときは、クズ芸人ぷりばかりがフューチャーされていて、彼のトークらしいトークは聞いたことがなかった。

そんなわけで、高円寺チャンネルで初めてちゃんと聞いた鈴木もぐらのトーク。それはウィットさと滑稽さにとんでいて、しかもそこにポンコツ感が交わって、とても面白かった。

そして、何よりいいなと思ったのが、ほんまもんの食いしん坊感。

トークの節々からも、そして、タブチの鳥野菜フライ定食の鶏むね肉フライを食べる姿からも、美味しいものを食べるのが本当に好きな人だというのが、よくわかった。

私自身も、美味しいものを食べるのが大好きなだけに、彼の食べる姿、美味しいもの好きなところには、共感を覚えた。

これを機に、高円寺チャンネルのもぐら氏がメインの動画を次々に見た。どれも面白くて、そして美味しそうで、いつかこのお店に食べに行こう!と決めた、そんな動画もあった。

高円寺チャンネルは本当に好きで、更新されるたびにチェックするので、ほぼ全部の動画を見ている。そして、どの芸人さんもそれぞれの個性があって面白いのだが、中でも、鈴木もぐらはこのチャンネルで特に優れた「食レポーター」だ。出ている芸人さんの中で、誰よりも、もぐら氏が食べているときが、一番美味しそうに見える。彼が本当に食いしん坊で、お金がないなりに高円寺グルメを楽しんでいるのがすごく伝わってくるのだ、

高円寺チャンネルきっかけで、鈴木もぐらさんを見る目がどんどん変わっていった。

というか、テレビでは大きくフューチャーされているクズ芸人ぶり、あの一方向からしか自分は彼を見ていなかったんだと思い知らされた。

なぜなら、別の角度から見てみたら、鈴木もぐらは非常に魅力的な芸人だったから。

借金を抱えたり、家賃を踏み倒したり、ギャンブルや酒や風俗が好きだったりと、…絵にかいたようなクズっぷりなのに、どこかとぼけて憎めなくて、そして、その語り口調と佇まいに何か不思議な情緒がある。

古い時代の貧乏作家や噺家のような、思い切りバカやってろくでなしで生きている様の中に「いとをかし」な風情がある。彼はまさにそんな芸人。

今は、彼が多くのファンに愛されている理由よくわかるし、私自身、本当に彼のファンになってしまった。

ちなみに、家で一緒にお笑いをよく見るうちの母も、私同様高円寺チャンネルを見ながら、鈴木もぐらを好きになっていったのだが、『もぐらくんが食べているのを見たら美味しそうで食べたくなった』と、今年3回程、晩御飯のおかずに鶏むね肉のフライを作った。

食べている姿が美味しそうだったから、思わず食べたくなって、作ったり食べたりしてしまう。

これこそが本当に優秀な食レポ芸人じゃないだろうか。

そう、鈴木もぐらはそうなのだ。

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この記事を書いた人

映画、音楽、文房具をこよなく愛するフリーライター。趣味はヴァイオリン。
執筆、取材等のご依頼はお問い合わせからか、startofall@gmail.comまでご連絡ください。