なぜ、キャスバルはシャアになったのか?『機動戦士ガンダム THE ORIGIN シャア・セイラ編 I 青い瞳のキャスバル』

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ごきげんよう、ライターの愛(@ai_writer)です。

アマゾンで『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』シリーズ6作のうち、4作までPrime会員無料ということで、一気に見てしまったので、感想を語っていこうかと思います。

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN シャア・セイラ編 I 青い瞳のキャスバル』

『機動戦士ガンダム THE ORIGINE』は、「機動戦士ガンダム」(ファーストガンダム)でキャラクターデザインを担当した安彦良和さんが改めてファーストガンダムの歴史を解釈して、一年戦争の前史を描いた漫画作品。2015年、安彦先生自ら総監督となってアニメ化され、全6作がイベント上映されてきました。

「青い瞳のキャスバル」は、アニメシリーズ第一作。キャスバル(シャア)とアルテイシア(セイラ)の二人の父であり、ムンゾ自治共和国の議長・ジオン・ズム・ダイクンが突如この世を去り、ダイクンに代わってムンゾを手中におさめたザビ家の手を逃れるため、幼い兄弟がランバ・ラルらの力を借りて地球へ亡命するまでを描いています。

「陰」の芝居でキャスバルを演じ切った田中真弓さん

変声期前の少年キャスバルを演じたのは田中真弓さん。このキャスティングについては、音響監督さんから反対もあったそうですが、安彦良和さんの大胆な要望で実現したものだそう。↓にも書いてあります。

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初代『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー、アニメーションディレクターである安彦良和氏が、自身が原作のコミック『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の『シャア・セイラ編」を自ら総監督をつとめてアニメ化。今回、上映された『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』は、その記念すべき第1話です。

確かに田中真弓さんていうと、ルフィとかクリリンとか、ちょっとおちゃらけたとこがある役のイメージが強いですが、本来は実力派でシリアスな芝居も十分できる方。

キャスバルの役、田中さんで大正解だと思いました。

幼いながらもジオン・ズム・ダイクンの息子らしい誇り高い少年キャスバルの心にうずまく悲しみや怒りが、少ないセリフの中から、ひしひしと伝わってきた。

久しぶりに田中真弓さんの「陰」の芝居を見て、ああ、この方はこういう演技もできるんだったっけと思いだした感じでした。

彼がなぜあのシャア・アズナブルになったのか、その起点が描かれたドラマであり、後の一年戦争で、敵味方に分かれることになるシャアとセイラの兄妹の始まりの物語。タイトル通り、キャスバル・レム・ダイクンの青い瞳に映った真実をを描いています。

すでに物の道理がわかる年頃であり、聡明に育っていただけに、少年キャスバルは、目の前で起こった悲劇の意味を悟ってしまった。そして、彼は青い瞳で誰が敵なのかをはっきりと見据え、母や妹を不幸にしようとする者たちを「やっつけてやる」と誓ってしまった。

妹のアルテイシアは、まだまだ無邪気な子供。父や母との別れを悲しみながらも、大人たちの醜さを兄ほど目の当たりにしないでいられたから、「みんなかわいそう」と争いを嫌う優しい心を失わずにいられた。

幼い兄妹を襲った悲劇、ここが、キャスバルが後に“赤い彗星と”呼ばれる戦鬼になっていく起点だったのかと、非常に納得がいくドラマ。それだけに切なかったですね。こんなに幼くしてこの二人は十字架を背負った人生を歩まなければいけなかったのかと。

終盤で、つかの間ですがキャスバルが子供らしい表情を見せるときがあります。アルテイシアと共に青い瞳を輝かせたあの瞬間が、彼が子供でいられた最後の瞬間だったのかもしれません。

ランバ・ラルとドズル・ザビの人間味溢れる姿も魅力的

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』アニメシリーズは、一度、アニメの世界を去った安彦良和先生が、再びその世界に戻り気合を入れて作ったのがよく伝わってくる作品。

絵もストーリー構成も声優さんたちの芝居も丁寧に作られたのがすごくよくわかる。1時間の枠の中で冗長になることも話を急がせることもなく、きっちりと明解なドラマが描かれています。

戦乱を生きる少年少女たちの物語ですから、基本的にはシリアスですが、アルテイシアの飼い猫・ルシファーなど、ちょっと笑わせてくれる要素もあって決して暗くなりすぎていません。

中でも、見ている人をほっこりさせてくれるキャラクターは、ランバ・ラルとドズル・ザビ。はい、両方共おっさんですね(笑)。

ファーストガンダムでも、シャアなどとは別の意味のカリスマ性で人気が高かったランバ・ラル。

心優しく包容力にあふれたプロの軍人である彼が、ザビ家に屈することなく、自身の正義の筋を通していく姿が気持ちよかった。

見た目は、いかつい軍人ですが、正義感と人情味溢れる人柄がとにかくイケてる。ハモンさんという才色兼備な恋人がいるのですが、素敵な女性が惚れ込む理由がよくわかる。こんな魅力的なおっさんいたら、私も惚れるとおもいます。本作に出てくる男性の中でほんと一番タイプでした。

ザビ家の三男・ドズル・ザビも軍人らしい仁義にあふれたおじさん。いかつい顔で怒るんですが、どこか憎めず、ギスギスした策略家たちが集まるザビ家の中で唯一このおじさんだけは好きだと思えました。

ランバ・ラルやハモンさんなど、まわりは決して悪い人たちばかりじゃなかった。

けれど、キャスバルの瞳に強く映ってしまったのは「やっつけてやる」敵だった。ここから、シャアの長い長い復讐劇が始まってしまったのか。

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この記事を書いた人

映画、音楽、文房具をこよなく愛するフリーライター。趣味はヴァイオリン。
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