韓国ドラマ『弱いヒーロー』をClass1、Class2と完走しました。
※今回は基本「ネタバレあり」の感想です。ネタバレしたくない方はご注意ください。
救いのない展開の中、少年の心情を繊細に描いた『弱いヒーローClass1』
『弱いヒーロー』は、秀才の高校生・シウンが、仲間たちとともに学校にはびこるいじめや暴力に立ち向かっていく物語。
……と書くと、いわゆる痛快学園物をイメージする方もいるかもしれませんが、本作は決してそうではない。
特に第1シーズン『弱いヒーローClass1』は、勉強や家庭の事情で様々なストレスを抱えた現代の若者たちの理不尽な現実を描く、非常にシリアスなストーリーになっています。
シウン、スホ、ボムソク。3人の友情の行方
優れた頭脳と観察力を駆使して、自分なりの戦略でいじめっ子たちに対抗するシウン。その中で腕っぷしが強くまっすぐなスホ、大人しい転校生・ボムソクと友情を育んでいきます。
けれど、いつしか3人の関係に亀裂が生じてしまうのです。
きっかけは3人の輪の中に家出少女のヨンが加わったこと。
彼女がシウンやスホとの距離を縮めていく中、様々なことが積み重なって次第にボムソクが疎外感を覚えていってしまいます。
スホのSNSをフォローして相互フォローを期待した。でも、してもらえなかったボムソク。
いつもごはんを奢っていたら、みんなそれが当たり前だと思ってしまったらしく、お店のレジ前に一人で置いていかれたボムソク。
これら一つ一つは些細なこと。
でも、心にささくれや疎外感を感じさせる威力は十分。
冷静に正論を言うならば、ボムソクが自分から「僕のSNSもフォローして」とか「今日は割り勘にしてくれる?」とか「誰か一緒に残って注文したの運ぶの手伝ってよ」とか、何かしら意思表示できたらよかったのだと思う。それができていたなら、シウンやスホともっと対等な関係になれて、こじれはしなかったはず。
でも、ボムソクは、そういうことが言えなかった。それこそ、フォロー返しは頼もうとしてみたけれど、結局伝える勇気がなかった。
家で養父に虐待され、前の学校ではいじめを受けていたボムソク。深く傷ついている彼は自分が誰かに好きになってもらえる自信がなくて、そして、誰かに拒否されることがすごく怖かったのだと思います。
だからこそ、意思表示ができず、その一方でごはんを奢るなどの奉仕で懸命に好かれようとしたボムソク。ただ、結果的にそうした自身の行動によって彼の心はなおさら傷ついてしまったような気がします。
ボムソクの気持ちが痛いほどよくわかった。
私自身、ボムソクほどにこじらせはしませんでしたが、似たような思いを抱いたことは何度かあります。
SNSで友達申請するときに、承認してもらえなかったらどうしようってドキドキしたり、
よかれと思ってやったことを、みんなが当たり前に受けとめて感謝の言葉が全然なくてちょっと寂しかったり。
たぶん、そういうことって、多かれ少なかれみな感じたことがあるんじゃないでしょうか。
自分も似た経験があるからこそ、ボムソクの気持ちが痛いほどわかってつらかったです。
シウンもスホもボムソクを傷つけたりないがしろにしたりするつもりはなかったはず。
だから、どこかのタイミングで3人が再びわかりあえたらいいのに……と祈るような思いで見ていたのですが、残念ながらそれは叶わなかった。
結局、ボムソクとスホ、シウンのすれ違いはいつしか後戻り不可能なところまでこじれてしまいました。
登場人物たちの心の動きを丁寧に描いたドラマ
第1シーズンはただただ救いがない展開で幕を閉じてしまって本当につらかったです。
ただ、そうした悲しさ、つらさも含めて、ボムソクをはじめとするキャラクターの心情がきちんと丁寧に描かれていたと思います。
だからこそ、暴力的で悲しいというだけでない、むしろ思春期の少年の心の機微を繊細に描いた作品という印象を持ちました。
心を閉ざし続けた挙句に友人を傷つけて、それを償うことすらできなくなってしまったボムソク。彼の人生に今後光がさす日は来るのだろうか。
失意の主人公が新たな友情と希望を見出していく『弱いヒーローClass2』
第2シーズン『弱いヒーローClass2』は、ボムソクの事件を機に転校したシウンの物語。
前の学校での苦い経験から、もう戦うまいと決めてクラスメイトたちとも距離を置いていたシウン。
しかし、いじめられっ子のジュンテやバスケ部員のヒョンタク、そして、バスケ部キャプテンのフミンらとの出会いをきっかけに、再びいじめや校内暴力に立ち向かうことになり、やがて、複数の高校を束ねる不良集団「連合」のボスであるベクジンと対決していくことになります。
『Class1』とは異なる、シウンと友人たちの関係
第2シーズンは、大きく第1シーズンと違うところがあります。
それは、シウンと友達の関わり方。
最初にシウンに近づいてきたのは、いじめられっ子の少年・ジュンテ。
メガネをかけた大人しそうな風貌で、ボムソクを思わせる感じがありました。
でも、彼はボムソクとは明確に違っているところがありました。それは、シウンに頼るのではなく、あくまでも自分の力でいじめに立ち向かったこと。
第1シーズンのボムソクに勇気がまったくなかったとはいいません。ですが、いじめっ子との立ち向かい方が基本シウンやスホの後ろをついていく感じでした。
対して、ジュンテはシウンの言葉をヒントにしつつも自分なりのやり方でいじめっ子と対決していく。ひ弱で優しい少年なのに、実は相当なガッツの持ち主でした。
このジュンテを見て心を動かされたからこそ、シウンは傍観者でいられなくなり戦いに身を投じていくことになるのです。
まず、このジュンテの立ち位置がボムソクのそれとは明らかに違ったので、おそらく今度はあのときのようなつらい結末にならないだろうと確信。
その予感は的中し、シウンとその友人たちの関係に第1シーズンのような歪みが生じることはなかった。友情が壊れることなくみなが一丸となったおかげで、第1シーズンとは全く違うラストを迎えることができました。
カリスマ性が魅力のキーマン・フミン 個人的推しは……
少年の心情をメインに据えていた第1シーズンとは異なり、いわゆる不良闘争がメインになっていた第2シーズン。
メインキャストの中でシウンと並ぶキーマンはバスケ部キャプテンのフミンでした。
シウンたちが通う高校の実質的なボスであり、明るく腕っぷしが強くカリスマ性にあふれたフミン。
家庭の事情やかつては仲の良かったベクジンとの関係、そしてシウンたちの友情など、様々なしがらみの狭間で苦悩しながらも拳を振りかざしていく彼の姿はかっこよかったし、非常にドラマチックでもありました。
ただ、私個人としては、フミンもよかったけどジュンテ推しでした!
喧嘩は全然強くなかったけど要所要所で頑張っていて、シウンの良き友人として優しい言葉もかけていたジュンテ。ヒョンタクとコンビになって色々と奮闘していくところもすごく好きでした。
物語のキーマンとまでいかなくとも、ジュンテの存在が物語の「救い」であったのは間違いないと思います。
まとめ:『Class1』『Class2』を続けて見るのがおすすめ!
『弱いヒーロー』、これから見ようかなと思う人は、できれば1、2と続けて見るといいと思います。
第1シーズンはもう本当につらい展開なので見終わった後やるせなくなるかもしれませんが、続けて第2シーズンを見たら希望が取り戻せるはずですから。
余談:豪華キャストのクズっぷりが…
最後に、ちょっとしたぼやき。
このドラマ、なかなかキャストが豪華で、特に第2シーズンは他のドラマですごく素敵な役を演じていた方々が、けっこうなクズ役で出演されていました。
もちろん、悪役を演じるのは役者としてすごいこと。実際みなさん素晴らしい演技でした。
ただ、他のドラマで優しかったり賢かったりする姿を見て大好きだっただけに……ちょっと切なかったです。
南のドラマが大好きな愛嬌たっぷりの兵士さんだった人とか。
キンパを作りながら天才肌の娘を守るお父さんだった人とか。
映画好き青年の親友で、恋する潤んだまなざしが印象的な作曲家だった人とか。
極めつけに、誰よりも賢くて歌もとびきり上手な医師だったあの人の最低野郎ぶりはだいぶショックでした。
まあ、みなさん、さすがっていうことで。