ドラゴン・スレイヤーは、勇ましい。
伝説の剣を片手に、火を吐く龍にひるむことなく立ち向かっていく。
しかし、ドラゴンとは本当に倒すべきもの? 彼らの事情、人を襲う理由を考えたことがある?
ヘタレ少年・ヒックがドラゴンを前にして選んだ道とは?
「ヒックとドラゴン」。ポスターを見たときは、少年ヒックが勇敢にドラゴンに立ち向かう物語だとばかり思っていた。
ところが、いざ見始めてみたら、冒頭からしてなにか違う。
まず、主人公のヒックはかなりのヘタレだ。
バイキングたちの村を襲うドラゴンたち。村人たちが勇ましくドラゴンに立ち向かう中、首領の息子にも関わらずやせて軟弱なヒックはドラゴンに立ち向かう力がない。そのせいで、村の中でちょっと浮いた存在だ。
ヒックは他のバイキンたちよりも聡明で優しい。だからこそ、彼は他の仲間ほどに単純にドラゴンに立ち向かえない。しかし、それゆえに他のみんなと同じことができないもてあまし、独特の偏屈な皮肉をとばすシニカルな少年になってしまった。
だが、そんなヒックにもチャンスが訪れる。自作の機械を駆使してドラゴン、それも最も危険と言われる伝説の龍“ナイト・フューリー”に投石をぶつけることに成功したのだ。
しかし、尾びれを失ったナイト・フューリーと対峙したヒックは、とどめを刺すことができなかった。
そして、彼が選んだ道は、ナイト・フューリーに新たな尾びれを作ってあげること。
そして、「トゥース」と名付けたこのドラゴンとともに空を飛ぶこと。
冒険と絆が少年を大人にしていく
争うのではなくともに生きることを選んだヒックとトゥース。二人の間には種族を超えた絆が生まれていく。
そして、ヒックは気づいていく。ドラゴンは実は人に災いをなすものではないと。
では、なぜ、ドラゴンが人間の村を襲わねばならなかったのか? ひょんなことからその意外な真実にヒックはたどりついていく。
喧嘩が弱いからこそ、真っ向から猛進しなかったからこそ、人間たちの中で唯一ヒックだけがその真実を引き寄せることができた。
そして、ヒックはバイキングたち、そしてドラゴンたちも守るために、仲間ともに自分なりの戦いで本当の敵に立ち向かっていく。
思っていたのとはちょっと違う物語だったけれど、ヒックのヘタレぶりにはむしろ共感できたし、それも含めて全体に漂うシニカルなスパイスが、この映画を他とは違う面白いものにしていたように感じた。
何より、物語が終わる頃には、ヒックと彼の相棒のドラゴン・トゥースが大好きになっていた。
強さだけが正義じゃない。弱虫のヘタレだけがたどりつける真実がある。世の中って、そういうもの。
それがわかったとき、少年たちは大人への階段を駆け上がっていくのだろう。

