お笑いを見ているときによく思い出すのが、芸人とストリップ劇場の話。
北野武さんや萩本欽一さんが、浅草のストリップ劇場の舞台に立って修行していたのは、有名な話。
この話を聞いたとき、ストリップ劇場は芸人さんにとって最高の芸を磨く場所だよなと、妙に納得した。
なぜなら、ストリップ劇場にやってくるお客さんたちは、お笑いが見たくて来ることなんかないだろうから。
そう、彼らは、ストリップ見たいわけだから、幕間のお笑いなんかに集中するわけないし、なんなら、お笑いなんぞとっとと終われと思っている客もいるはず。
だからこそ、ストリップ劇場でお客を笑わせることができたら、すごいこと。芸人目当てでもなければ、そもそも笑う気もなく集まってきている、しかも、箸が転げただけで笑うような人種でも年代でもないおじさんたちから爆笑をとれたら、それは間違いなくおもろい腕のある芸人だろう。
この話がずっと頭に強く印象に残っているだけに、今でも、お笑いを見ていて、つまらなかったり、うーんと思ってしまったりするやつを見たとき、「ストリップ劇場に立ってみたほうがいいのでは?」と、我ながら上から目線で偉そうだが、思ってしまうときがある。
しかしである。
先日行われていたM-1グランプリ2020決勝、個人的には例年より大笑いができずちょっと物足りなかった。そして、失礼だが、ストリップ劇場とかで修業してみたほうがいいのでは…と思ってしまった人たちもいた。
が、逆に一組だけいたのだ。この人たちはストリップ劇場でも絶対受けるに違いないと確信してしまった漫才師が。
それが、錦鯉である。
ボケの長谷川さんが49歳と最年長ファイナリストであることでも話題を呼んだ錦鯉。彼らの漫才は、長谷川さんの年を重ねたからこそ出てくる人間味と哀愁にまみれた、そして最高にバカバカしすぎるパチンコ漫才。
M-1のような大会で優勝できるネタではないかもしれない、でもすごく面白いネタだった。ばかばかしいパチンコを演じ続ける長谷川さんは本当に魅力的だった。
おそらく、彼らは、ストリップ劇場でも間違いなくウケる。
なお、そう確信できた2020年のM1ファイナリストは、錦鯉だけ。
だとすると、M-1グランプリって、本当に面白い腕のある芸人さんて、なんなんだろうね。
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